Q:先日、皮膚科の医院でステロイドの薬を処方されました。しかし、母から「ステロイドの薬はよくないから、使わないほうが良い」といわれています。ステロイドの薬は本当に大丈夫なのでしょうか?
A:ステロイドは、1990年代に有名な某ニュース番組によりネガティブな放送がされたことをきっかけに過度に不安をあおる誤った報道がされました。ステロイドは医師の指示に従って正しく使用すれば、極めて有効な薬です。もちろん薬ですので他の薬と同じように副作用もありますが、過度に不安を感じる必要はありません。皮膚科医師の説明通りに、正しくお使いいただければ、非常に優れた効果を発揮します。
ステロイド外用薬とは?
ステロイドは、両方の腎臓の上端にある「副腎」から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。アレルギー反応を強力に抑える薬で、強さは以下5つにランク分けされます。
Ⅰ群 ストロンゲスト(SG)…デルモベート、グリジールなど
Ⅱ群 ベリーストロング(VS)…メサデルム、アンテベート、マイザー、フルメタなど
Ⅲ群 ストロング(S)…エクラ―、ボアラ、リンデロンVGなど
Ⅳ群 マイルド(ミディアム)(M)…ロコイド、キンダベート、アルメタなど
Ⅴ群 ウィーク(W)…ブレドニゾロン、エキザルベなど
首より下の身体には、Ⅲ群(ストロング)クラスの薬が使われるのが一般的です。少し強い炎症の場合は、Ⅱ群(ベリーストロング)クラス、手や肘、膝などの 皮膚の厚い部分にはⅠ群のストロンゲストの薬が使われます。顔面や陰部では血流がよくステロイド外用薬の吸収率も高いため、Ⅳ群のマイルドクラスの薬が処方されることが多くあります。
ステロイド外用薬の副作用
ステロイドはアレルギーや炎症を鎮める代わりに、皮膚の細胞の増生を抑制し、局所の免疫反応を抑えてしまう働きがあります。必要以上に強いものを長期間にわたって使い続けると、皮膚が薄くなり、ひどい場合は毛細血管が浮き上がってみえるようになります。使用する薬の強さを知り、医師の指示を超える量を使用したり、指示以外の部位に使用する事は避けてください。
この副作用と思われる働きも、細胞の増生を抑制する必要がある病気(ケロイド体質・結節性痒疹など)では有効となるため、一概に副作用とはいえないかもしれません。
感染症には弱い
ステロイド外用剤はアレルギー反応を抑えると同時に、皮膚の免疫の働きも抑えてしまいます。このため、にきび、ヘルペス、カンジダ、水虫などの感染症には逆効果となり、症状が悪化してしまいます。ステロイドを使っても良い状態かどうか、皮膚科での診断が重要になります。
塗布量
軟膏やクリームで処方された場合、指先の関節1つ分絞り出した量(約0.5g)を両手のひら分に塗るという量が一般的です。この量は「ワンフィンガーチップユニット(1FTU)」と呼ばれています。
実際にこの量を塗ってみると、かなりべとつく感じになるかと思いますが、それが適量です。少なすぎても効果が得られません。「たかが薬の量」と甘く見ず、皮膚科医師の指示に従った正しい量と頻度で使うように心がけてください。
ステロイドに関する誤った認識
1990年代の報道の影響により、未だに以下のような誤った認識をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
× ステロイド依存症になる
× 使用を中止するとリバウンドがある
× 骨がボロボロになる
× 皮膚の色が黒くなってしまう
× 薬が皮膚の中に蓄積してしまう
× 妊娠中や授乳中に使うと危険
× 目の周りに使うと白内障になる
繰り返しになりますが、皮膚科医師の指示に従い、正しい量と頻度で使えば以上のような心配は無用です。ステロイド外用薬を正しく、効果的に使っていくことが重要です。